戦争映画はこれを観ろ!『ハートロッカー』戦地の爆弾処理班の日常を描いた作品
大人になったら分かるだろう、
昔好きだったものも、それほど特別な存在ではなくなるーー
戦争に自ら志願して参加する一人の二等軍曹(ジェームズ)の人物像を描いた作品。
舞台は2004年のバグダッド。撮影場所もそこにかなり近づけたという。
タイトル『ハートロッカー』とは遺留物を入れる「棺桶」、心を遺しておく置物。
なぜなら爆発に巻き込まれてしまうと人体は残らないから(そのため実際に履いているブーツにドックタグ(身分証明)を入れておくのだそう)。
当映画は多数の賞を受賞しています。
2008年のヴェネツィア国際映画祭、トロント国際映画祭で上映。第82回アカデミー賞では9部門にノミネートされ、作品賞、監督賞、オリジナル脚本賞、編集賞、音響効果賞、録音賞の6部門で受賞した。
タイトルはアメリカ軍のスラングで「苦痛の極限地帯」、「棺桶」を意味する。
ブラボー中隊、任務終了まで……あと三十八日。
【5つのシーンで示される“人間関係の変化”や“戦争の一面”】
映画『ハートロッカー』は大まかに分けて5つの場面(+エピローグ)で構成されています。
各々のシーンで伝えたい事が見える。
1. 〈ぬいぐるみほどの小さな四駆のロボットを走らせる最初のシーン〉では……
ジョークを交えて余裕ぶるアメリカ兵。歩く猫や散乱したゴミ。アパートのベランダから爆弾処理班を見つめているイラクの人々……戦地の日常のなかには常に爆弾が仕込まれているという恐ろしさを感じさせます。マスク内での血に戦争の息づかいを知る。
2. 〈新たなリーダー“ジェームズ軍曹”がやってきて、彼が爆弾処理を担当するシーン〉では……
ジェームズ二等軍曹の危険な性格がまず描かれる。走る車の前に出たり、爆発物を前にして防護服を脱いだり。命令は無視、ヘッドセットは投げ捨てて。死と隣り合わせの環境を“楽しんで”いるようにも見える。
仲間に言われる「任務だ」と。彼は言い返す「戦争だ」と。
これがジェームズの最初のシーン。
3. 〈砂漠での撃ち合いのシーン〉では……
ここではコンピュータの立ち寄れない戦争の生々しさと、覚悟が現れてます。人を撃つ覚悟があるか。頼りない仲間に力になってもらわないといけない状況で堂々としていられるか。取り乱さないか。
瞼のハエがちょっとずつ口に近づいていく。それは死の歩みも示唆している。
この場面が一番心に残ってる。自分でやらないと誰もやらないという苛酷さが目に焼きついている。そして信頼が生まれる瞬間がわかった。
4. 〈校舎のような場所で敵を探索するシーン〉手と目で合図する無言の緊張感のなか、その足は進んで……
戦地で子供がどのように扱われているかの悲惨さが映し出される。軍曹が子供の遺体を運んでいる際の……“力ない死体の頭の揺れ方”が観ている人に無力感を抱かせます。
5. 〈青い蛍光灯に照らされた夜のシーン〉では……
子供をあんな目に追いやった人物をあぶり出そうとある家に侵入する軍曹。しかし、そこは全く関係のない場所で。
そこで見た光景はジェームズに「彼らにも生活があり、学もある」という事実を突きつけるものだった。
人の多様性の中で誰を敵と見ればいいのか軍曹は混乱に陥ってしまいます。
皆同じ人間であることに変わりはないのだと。
自分は彼らを同じ人間だと思いたいのかそうじゃないのか。
戸惑う彼にすぐ命令が下され、その判断が大きな代償に繋がって……
ーーブラボー中隊、任務終了まで……あと二日